数奇屋のリフォームにおける、高度な技術
 
 

床柱・鴨居・丸桁・化粧桟の取合い


床柱・鴨居・書院竹鴨居の納まり


床柱・書院窓・掛け花の納まり


床柱・床框・床の納まり

 

樹の心を求め、心を通る一本の直線を基に。

永丸太で組み立てる仕事には、角材とはまた違った固有の技巧がある。
丸太の場合は角材のように、表面を平滑に削り上げる苦心は少ない代わりに、皮肌の持ち味を生かすために、あるいは削ったツラの部分との調和をとるために、色付けなど種々な工夫を凝らす。
木地のもつ自然な味わいを引き立たせるのである。
なんといっても角材に比べて丸太のむつかしさは、不統一な丸太と丸太を組み合わせるところにあるといってよい。
丸太同士を縄で縛る原始的な方法であれば問題なく、そこにまだ丸太としての技術は存在しない。
角材と同じように、丸太と丸太を合理的な仕口で緊結していくところに、丸太特有の技術がある。
丸太は人工的に製材された角材と異なり、自然なもので、断面はけっして正確な円形でないし、本(根)のほうより末(先)のほうが細くなっており、また大なり小なり曲りを帯びていたりする。
そういう均一性に欠ける材をもって、水平と垂直の骨組を形成していかねばならない。
真直ぐでない部材のなかに、動かない直線を見いだしていくのである

あくまでも自然な姿に。

棟梁はまず、丸太の心を求め、心を通る一本の直線を基準に仕事をすすめていく。
その段階ではもう角材と同じかというと、そういうわけにはいかない。
たとえば、一本の丸太の水平材が取り付くとする。
丸いものと丸いものがT字形に出会う時、それが自然に交わるよう取り付けられていなければならない。
そのためには、柱に水平の部材を刳り付けていく。
その場合に、一方が、あるいは両方が皮付きのあったら、皮がめくれないよう、そして両者の皮が互いに傷め合わないよう、あくまでも自然な姿に取り付いているように・・・。
二つの部材の質や、太さ細さの加減を見合わせて加工することは、かなり苦心と熟練を要するのである。
そうした技巧の優劣や心入れの度合いによって、数奇屋のたたずまいが大きく左右されるのである。
こうした技術は、数奇屋造りが発達し、だんだん精巧化された結果であって、昔はもっと無造作な仕事をしていたのではないかという人がよくいる。

柱造りの妙味、彫塑的な感覚や造形力を。

しかしそうでないことを、侍庵は、利休が真に侘茶のための茶室として創り上げた作品であった。
もしそうであるなら、そこに示された技術は最も素朴な段階のものであったといえる。
利休の指図を直接うけた棟梁が、創意工夫を凝らした技術であった。
床框は、桐材である。
この材は見付に三つも節がある、なにげない材であるが・・・。
高さ二寸五分、厚さ一寸三分、メン三分という形をそなえているのだが、途中から上端は消滅して自然の丸味になり、ちょうど丸太を割ったままの形になってしまっている。
これは実に大胆な材料の見立てであり、使い方である。
それは決して無造作に取り付けられてはいない。
よくみると床柱のほうでは坊主面が取られ、きちんとした框の形に仕上げられている。
それが途中から自然の丸みに変わっている。
心細かい技巧によって達者に素材が生かされている。
框の作り方をみるだけでも、丸太を扱う高い技術が既に開発されていたことを知ることができるのである。

心細かい技巧によって素材を生かす考えかた。

丸太においても、柱を作ることが一番基本の作業である。
本と末と直径に差がなく、曲りがないような丸太であれば、そのまま柱に立てても構わぬように思えるかも知れない。
事実そのような扱いがこのごろは多く見かけるし、それが丸太柱の理想だと錯覚している人が多いのである。
しかし上から下まで丸いままでは、構造体の一部として、不都合な場合が生じるのである。
すなわち壁が付いたり、戸襖が建て付いたり、また框とか落掛、鴨居などが取り付いたり、畳を敷き込んだりするのに、どうしても柱が丸いままでなく、平面的なツラが必要になることがある。
必要に応じて適切なツラが施されることにより、一般的な素材としての丸太が、数奇屋を組み立てる「柱」に生まれ変われるのである。

 

 

柱造りの妙味、彫塑的な感覚や造形力を。

丸太では、どの丸太をどこに立てるかは、あらかじめ定められ、その部材の柱として必要な加工が施されから、他の部材と入れ替えることは出来ない。
柱のツラは、その材の形・凹凸・曲り・太さなどに応じ、いろいろな形状を呈する。
ツラは前に言ったような、構造上の求めによって施されるが、同時にそれは、柱のたたずまいに影響を及ぼす、いわば柱の意匠的要素でもある。ツラの高低、その形状が、柱の表情をつくり、時には力強く、あるいは繊弱に、また太くも細くも見せる。
丸太のままの状態では、率直で端正であっても、ツラ付けの如何によっては、品位のない柱ともなるし、逆に使いにくい丸太でも巧みなツラが付くことで、見所ある柱に作り上げられることもある。ツラの付け方が、丸太の活殺を握っているといっても過言ではない。
ツラを付けてない丸太は、建築には仕上がっていない、ただの丸太に過ぎないことを教えていたのである。
いま古い遺構を見ても、ツラのない柱はまずない。

個性豊かな仕事がなされる数奇屋造り。

今日では床柱の場合、筍ヅラという低いツラ付けが約束のようになっている。
利休流の小間ではわずかに太目の丸太が床柱に立てられるから、畳へはみ出てくる部分を削る程度にツラを付けるとすると、筍ヅラになってくる。
しかし、個性的な仕事がなされている数奇屋では床柱のツラもさまざまで、いかにもその丸太の持ち味を生かし、また他の部材との調和も考えて工夫が凝らされているのである。
このような丸太の柱作りは、決して単純な仕事ではなく、幾何学的な技術とともに、彫塑的な感覚や造形力を必要とする。
ツラは、その高低や形さえよければよいというものではない。
丸い部分と平滑な部分とが、際立つような感じに削られていては好ましくない。
まず釿で斫り、鉋で順次削り上げていくその工程に、いうにいわれない勘と手加減が要る。
それはやはり茶の湯の心に通じるものである。

数奇屋造:門全景&天井錆丸太組
 
 


傘天井



丸桁・化粧桟の取合い



錆丸太柱・丸桁・化粧桟の納まり