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Monday, September 08, 2003, 13:40

2003/09/08

受継ぎ、伝える
よみがえった家のぬくもり

☆建設したマンション内に祖父の代から引き継いた屋敷の部屋を移築(神奈川県横須賀市)

「生きてる」。すべての家財が運び出された我が家に足を踏み入れた瞬間、妻は、使い込まれた柱や戸、床がまるで会話をしているような気がしたという。「取り壊されていく様子は見たくない」。鈴木裕二さん(仮名、63)は、解体現場には一度も足を運ばなかった。昭和初期。銀行マンの祖父は、神奈川県横須賀市内に高い天井と暖炉のある大正ロマンの香り漂う家を建てた。長い廊下のふき掃除は、いつの代も子供の役目。黒松や梅、柿などが生い茂る四百坪の庭は幼少時代、遊びの宝庫だった。

すべては十五年前の父の死にさかのぼる。土地と家屋は、二人の妹との共有名義に。バブル経済のあおりで相続税は一億円を超えた。二十年分割でも年一干万円の税負担。サラリーマンには重すぎる。それでも「土地と家屋を守るのが後継ぎの務め」。一人で利子だけは払い続けた。しかし、曲折の末、妹には権利相当を現金で分与することに。現金を調達するには、土地を手放す以外に選択肢はなかった。跡地にはマンションが建設されることになった、別の土地での暮らしも考えた。そんなとき、ある工務店を知った、家屋からマンションヘの部分移築を手がける。土地も家屋も失う中で一筋の光明が差した。マンションは二年前の十一月に完成。購入した十三階の新居に真っ先に運んだのは仏壇だった。「土地は自分のものではなくなった。しかし、亡き祖父母や両親とまたここで暮らせる」。安ど感に包まれた。移築したのは書院造りの夫婦の部屋。祖父母の葬儀や両親の結婚披露宴など、家の歴史を見つめてき部屋でもある。無機質なマンションに古い部材がなじむのか一抹の不安はあった。が、杷憂(きゆう)だった。細やかな装飾が施された雪見障子、床の間、そして幼いころに磨いた廊下の床板。すべてが昔のまま。息子が幼いころ、柱に書いた落警きも健在だ。家を守る最低限の責務は果たせた気がする。去年の夏。孫の絵を床の間に飾った。祖父から孫まで五世代の家族の営みがマンションの小さな空間に凝縮された。よみがえったぬくもり。これから先も家族の歩みがこの一室の隅々に刻まれていくだろう。


 

Sunday, August 10, 2003, 13:37

2003/08 - Memo Bubun Saisei

古民家スタイル

◇部分再生 写真=宮坂政邦 photo/Masakuni Miyasaka(WPP)

◆マンションの高層階に今までどおりの暮らしを再生T邸(神奈川県横須賀市)

14階建てマンシヨンの13階。ベランダ越しに見える小高い山の向こうは東京湾、西側の窓からは遥か遠くに富士山が見える。築70年の民家の一室をマンション内に移築・再生したという珍しい事例である。神奈川県横須賀市のTさんは、おじいさんの代からこの土地に暮らしていた。家は昭和初期に建てられた、高い天井と暖炉をもつ大正ロマンの香りがする旧家であった。それが平成11年、この土地にマンションの建設計画が浮上し、家を壊す運びとなった。その際、由緒ある建物だったせいもあり、見学させてほしいという人があった。それが、エコ住宅リサイクルバンクの二藤さん。「とてもいい家なので、このまま壊してしまうのはもったいない。とっておきましょう」という二藤さんの言葉に、Tさんの気持ちが動き、保存のための解体、再生に踏み切ったという経緯である。マンション施工の工期が45日間と限られたため、特に思い入れのある一部屋に限定された。時間があれば、一軒まるごとの再生も可能だったそうだ。再生された座敷は10畳から8畳へと変更されたものの、柱、雪見障子、書院は昔のままである。一畳の床の間は奥行きを半分にし、欄間は壁の高い部分から鴨居の真上に付け変えられた。廊下の床板や納戸の障子、リビングのガラス戸や古い調度品など、この座敷以外にも随所にかつての家の面影が散りばめられた。Tさんは、「心が落ち着いて昔の家にいるみたいです。マンションの13階といえばさぞ空とのつきあいになるだろうと思っていましたが、山の緑がたくさん目に入ってきて、あまり高いという感じはしないんですよ。今は、この部屋を鑑賞する楽しみもできました」と喜んでいる。

☆Tさんは昔から、この座敷に寝転ぶのが好きだったという。窓の景色は変わっても、畳の感触、部屋の落ち着きは変わらない。マンションヘの古材再生は工事関係者にとっても初めての貴重な経験だったようだ。=写真

☆古材は磨いたり塗り直したりせず、そのまま使用。檜の床板は新しいフローリング材と比べると、暖かくて柔らかいことが実感できる。息子さんが小さい頃、柱に書いた落書きも未だ健在。欄間や書院の装飾は、昔の職人技の結晶。障子の桟は一本一本面取りされており、細やかな手仕事は感嘆に値する。=写真

●DATA
再生前の築年/築70年
再生の工期/平成13年夏の45日間
再生後の面積/一戸31坪(そのうち7坪分を再生)
再生の費用/約1360万円
設計施工/NPO法人エコ住宅りサイクルハンク
050-5526-1463東新総合050-5526-1462




 

Friday, August 08, 2003, 13:23

2003/08 - Business

特集:夢の住まい/リフォーム・ブームを追うエコ住宅リサイクルバンク

◇古い民家の廃材をリフオームに活用し、環境や文化保護に貢献古い民家をマンションの一室に移築したのは、古民家再生を唱えるNPOのエコ住宅リサイクルバンク。同社が提案する古材を使用したリフォームは住文化や環境保護を考慮した新しいリフォームの形だ。

◆年間一万戸の民家が解体

少子高齢化が進むにつれ、古い民家が続々と壊され失われているという。その数は年間一万戸を超えるといわれているのだ。だが、そんな古民家の保存や再生を呼びかける運動も最近広がってきている。NPO法人のエコ住宅リサイクルバンク(横浜市)もその一つである。自らリフォーム専門会社を経営している、代表の二藤忠さんはいう。「私自身、多くの仕事を手がけてきたなかで、明治、大正、昭和に建てられた家が解体され、処分されていく現場を目のあたりにしてきました。しかし、その廃材の一つひとつを見てみると大工や建具屋のすばらしい技術があるし、部材自体もいいものが使用されている。これが処分されていくのは、日本民家の伝統文化自体が捨てられていくのと同じです。ですから、このような現状を社会の多くの人に知ってもらい、どうにかして日本民家を残せないかという思いからNPO法人という形で活動を始めたのです」また、民家解体にはもう一つの問題もある。建築廃材は全産業廃棄物の三割を占めるといわれているが、このような廃棄物処理問題をはじめ、新建材によるシックハウス症候群、木材の過剰伐採による山の荒廃など環境破壊につながっているのだ。「私たちは日本家屋の文化継承とともに、国産木材のふるさとである
山の再生や建築廃材の減少による環境保護のため、民家(住居)再生の方法を紹介し、その普及に努めているのです」

◆マンション空間に民家の和室を再生

そこで、同社が提案しているのがリフォームという形だ。それも古い民家の廃材を使って行うという㍍のである。「古材や家屋そのものを残そうと考えた場合、家全部を移築するのはなかなか難しい。それなら、民家の内部だけを新築の一戸建てやマンションの中に移築してもいいのではないか、というのが一つの考えとしてありました。つまリ、空間を再生するということです」その考えを実現したケースが神奈川児横須賀市にある。昭和初期に建てられた築七〇年のTさんのお宅である。丁邸は事情によりマンションに建て替えられることになったが、長年住み続けた家が姿を消すのは忍びない、家の思い出を残したいという家主の強い要望があった。そこで二藤さんに相談を持ちかけたのだ。「一番いいのは家全体の移築ですが、そうすると都会では土地問題を考えて難しい。その代わりに和室一室など部分的にならマンションの部屋の中に再生できるということを提案しました。Tさんのお宅はとても⊥)一派で、昔の日本文化の良さが詰まって
いる。これは残さないといけないなと私自身も感じましたね」

最初はTさんも本当にそんなことができるのか不安げだったが、コミュニケーションをと.りながら作業が進められていくなか、完成が近づくにつれてその不安が喜びに変わっていったという。マンションは居抜きで入手、そこに和室を再現した。スペースの関係で一〇畳あった和室は八畳に削られたが、細部にいたるまで忠実に再現された。細かい投網模様の入った書院のガラス戸、鳳鳳が彫られた欄間、柱もそののまま利用された。柱には昔の落書きが残ったままだ。天井と畳以外は元の部屋の部材が使用されている。襖と障子を閉めればマンションの中とは思えないほど、元の部屋の雰囲気がそのまま蘇る。費用は家屋の解体に五〇〇万円、施工が三五〇万円。工期は四五日で仕上げた。「使用した古民家の部材と同じくらいのものを新しく揃えるためには、相当の費用がかかリます。それくらい良い部材が使われていたのです。そういった伝統文化を継承することができたのはもちろんですが、それとともにTさんの昔の思い出を残せたことがうれしいですね」和室だけでなく、長年親しんだ床板、引き戸などの建具、居間にあった暖炉などもリビングや玄関で再利用されている。トイレの戸も、そのままマンションのトイレに使用された。これにより、建築廃材も通常より大幅に減らすことができた。

◆古材や古民家をデータベースで管理

「もともと昔の日本家屋はリサイクル住宅だったんですよ。ところどころを修理しながら住んでいた。大黒柱の多くは仕口継ぎ手工法で補修された跡があり、匠の技がここに生かされていたのです。それが、高度成長期に入り、消費は美徳という考えが一般的になり、住宅に関しても古くなれば新しく建て替えればいいという発想が普通になっていったのです」

日本の家は約二五年で解体される傾向にあるが、それは木造建築が約二五年で減価償却がゼロになり、建物の評価もほとんどなくなるからだという。ちなみに欧米の住宅の寿命は四五年から七五年といわれている。中古住宅の流通量をみても、欧米に比べ、日本はほとんど流通していない状態である。だが、ここへ来て国土交通省は循環型住宅市場政策として、米国並みの「中古住宅」流通市場整備を進めている。民家も「スクラップア
ンドビルド」から「ストック」の時代を迎えているのだ。「再生させる手段としてリフォiムを行うことは、住宅としての再評価を得ることができ、中古住宅流通の活性化につながります。また、リフォームの材料として、古材を使うことで廃材の量を減らすことができ、環境保護につながる。まさに一石二鳥なのです。古材の昔の味を生かすのもいいし、カンナをかけて新材として使用してもいい。そして、私たちが使用された古材と中古住宅をデータとして保管しておく。リフォーム住宅のカルテとすることで商品としての住宅流通を促進していくのが、今後の目標です」

現在、エコ住宅リサイクルバンクは、古民家や古材の情報を集め、提供者と利用者の橋渡しをするサービスを進めている。これを民家再生の足がかりとして展開していく考えだ。同社のホームページ(http://www.ejrb-y/)では、解体された古民家から引き取った柱などをはじめ、障子や板の間、欄間、和箪笥などの古材が掲載されている。また、古民家そのものの情報(会員のみ)も同様に扱っておりすでに多くの問い合わせがあるという。「将来的には、古民家だけでなく、古い街並みを残していくような活
動も考えています。それには行政、企業、市民などの協力が不可欠です。さまざまな機関と協働して住文化の保存・再生をめざしていきたいですね」

☆解体前のT邸(数奇屋風民家)=写真
☆解体中=写真
☆新築マンション内に再生=写真
☆障子や戸なども再利用=写真







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