木と語らい、木を知る ~悠久の美~
 
地震に強い柱に通す「貫工法」が、伝統古建築の強さの秘密

2005年現在、日本には住宅が5300万戸くらいあります。
1995年阪神大地震以降も住宅において耐震化はなかなか進んでいない実態が明らかになっています。同震災では犠牲者を出した倒壊家屋の大半が老朽化していた、中でも被害が甚大なのは戦後の混乱期や高度成長期に無秩序につくられた。
木造住宅密集地で、犠牲者の約八割が建物倒壊による圧死だった。
震度6は「耐震性の低い住宅が倒壊に達するレベル」とされる。直下型の場合、一瞬のうちに倒壊する建物の下敷きに犠牲者が出ることが多い。
建築基準法の耐震基準が強化された1981年以前に建てられた建物が大きな被害を受けた。
現在、古い耐震基準で建てられた住宅は約2100万戸あり、約1300万戸は耐震性が不足しています。「20世紀の負の遺産」です。

五重塔や三重塔もたくさん現存している。
しかし、日本には五重塔や三重塔も現在もたくさん残っています。
五重塔だけでも全国で25塔を数えます。地震国の日本でありながらこれだけの数の五重塔や三重塔が残っているのは何故だろうか。
文献によると、特に安政元年11月(1853年)の「安政の大地震」では西日本を中心にマグニチュード8クラスの激震に襲われましたが・・・。
また、この地震に限らず、五重塔や三重塔が地震や台風で倒壊したという記録はありません。
どんな強烈な揺れも吸収してしまう構造に造られているからです。すばらしい一語につきます。

心柱と呼ばれる柱が中心に。
五重塔や三重塔のその形(すがた)から、皆様は中心に太い柱があって各層を支えていると想像されるかもしれませんが、心柱と呼ばれる柱は中心にあります。
各層を支えるような役割はしておりませんし、各層の柱や梁から独立して地面から真っ直ぐに立っています。五重塔や三重塔の構造では各層はそれぞれ下の層の上に載っていて、地震や台風で揺れても各層がそれぞれ別々に揺れて、地震や台風の揺れを吸収するのです。
また、塔が大きく揺れれば各層が心柱に接触することになりますが、接触することによって、各層の揺れが大きくなることを邪魔します。
五重塔や三重塔の構造上もっとも大事なところは釘を使わず、木組みで構造材を組み「貫」を使っていることです。
木は皆様が考えておられる以上に強いのです。

柳に風折れなし。
強いからあの端正な形(すがた)の中に強靭な力を込めることができ、同時に遊びもうまく使えているのです。
木組みで生れる遊び、各層が独立しているという構造の遊び、さらに心柱という遊びが合わさって、素晴らしい耐震性を発揮するのです。
塔を礎石の上にただ載せただけで大丈夫か、柱は倒れないかと、皆様は思われるかも知れません。
そこで柱を安定させるために、柱の頭に溝を掘り、そこに構造材を組み込んで柱と柱を結ぶことによって、建物の軸部としての強度がまします。
「貫」には、柱の一番上に通す「頭貫」の他に、その下の「飛貫」、「内法貫」や、柱の一番下に通す「地貫」など、柱のどこを通すかによっての呼名が違います。
この「貫工法」では釘を使わないで、木と木を組み合わせて組んでいきます。
現在の建物のように釘や接着剤で止めるのではなく、木と木そのもの同士が、がっちりと組み合わさっているので構造的に強い。
現在の新築木造建築やリフォームでも「古の棟梁たち」が手間ひまをかけた技、「貫工法」の木組みで造っていけば、揺れながらも揺れを吸収いくので耐震性は高い。
「柳に風折れなし」という訳です。
 
 

古民家再生の解体
 

大黒柱から内法貫を外す
 

大黒柱に彫られた仕口
 

大黒柱と地貫